君のことは一ミリたりとも【完】
凭れ掛かってくる彼の身体を払い除けようとするとがっしりと手首を掴まれた。
「駄目です。罰として俺の家まで連行します〜」
「は!?」
「ね、もうちょっと飲み直さない?」
「……」
仕事終わりに落ち合って、一緒にご飯を食べて、帰り道に次の約束をする。
そして、そのあとは……
「亜紀さん」
そのあとは、どうなるの。どうするの、私たち。
部屋について冷蔵庫の扉を開けた彼が「お!」と、
「やっぱりビール少なくなってた。コンビニ寄って正解」
「……」
結局、家までついてきてしまったけれど。
ほんの数日前まではここで暮らしていたけれど、何故か今は見慣れた景色なのによそよそしい気分になる。
リビングの入り口前で立ち尽くしていると私を見兼ねて「座れば?」と促した唐沢の声に従ってソファーに腰を下ろした。
すると暫くして缶ビール二本を手にした彼が私の隣に腰を落とし、そっと身を寄せてくる。