君のことは一ミリたりとも【完】
メディアの注目も集まる大きなイベントを任されたこと。期待してると言ってくれたこと。
そして、
「必ず、成功させます」
前の会社から私を見つけてくれたこと。
他の社員に虐められていたことへの同情ではなく、私の仕事を見て必要としてくれたこと。
生瀬さんとの出会いが、今の私を作っている。
「あぁ、頼んだ」
この人に裏切られたこと、気持ちを消したいと思ったことも忘れてない。
それでもこの人のそばにいる理由はそれだけじゃないから。
「時間を取って悪かったな。仕事に戻ってくれ」
「あ、あと……」
腰を上げた生瀬さんに咄嗟に声を掛けた。週刊誌のこと、少しだけでも話を聞きたかった。
だけど、
「どうした?」
「……」
彼の微笑みを見て口を閉ざしてしまう。きっと彼はあのことを口にはしないだろうと察してしまったから。
彼の中でも私とのことが完全に終わっているのだと、その笑顔を見て伝わってきたから。
「……いえ、なんでもないです」