君のことは一ミリたりとも【完】
最後に一つ、心の中で感謝を告げた。
「亜紀、聞いたぞ。冬のライトアップの仕事任されたんだってな」
凄いな、と休憩中に声を掛けてくれた菅沼に「ありがとう」と微笑む。
「でも大きな仕事だからこそ責任も重いし、気を引き締めないと」
「……そっか、もしなんか助けいるようだったら言って。つーかこれから相当忙しくなるんじゃないか?」
「うん、打ち合わせは再来週からみたい。今のうちに企画書考えないと」
やることが目に見えてきたらより一層やる気が高まってきた気がする。
キーボードを叩いていた手を止め、自然と目線がテーブルの上に置かれていたスマホに注がれる。
「(向こうも忙しいか)」
こういう時、話を聞いてほしいだなんて自分が思う人が出来るとは思わなかった。
1時間だけ残業をして家に帰ると冷蔵庫に残っていたもので適当に夕御飯の準備をしようとキッチンに立つ。
さて、と冷蔵庫のドアを開けたところでリビングに置きっぱのスマホが鳴った。
後回しにしようかと思ったがもし優麻だったらと思ってエプロンをしたまま取りに行く。
すると、
【今から亜紀さんち行っていい?】