君のことは一ミリたりとも【完】
まさかの唐沢からの連絡で「は!?」と大声が飛び出す。
【仕事は?】
【終わったー。もう力が出ない】
【うち来られても何も出せない】
【じゃあ途中でなんか買ってく】
買ってく、って……この間の金曜に会ったばっかりなのに。
【駄目?】
断ろうとした指が送られてきたメッセージを見て動きが止まる。
駄目……とは、言えないじゃん。こんなの。
「(仕事でなんかあった?)」
直接会って聞いてほしい話があるとか。
色々な可能性が思い当たり、段々と断りづらくなってきた。
仕方がないな、と頭を抱えると指の動きを再開させて返事を返す。
【いいよ。分かったから】
すると間髪を入れずに猿がハートを抱えたスタンプが送られてきた。なにこれと顔をしかめるとスマホを置いて溜息を漏らす。
「(適当に、出来ないじゃん)」
これだから嫌になる、あの男は。