君のことは一ミリたりとも【完】
昨日よりは大分顔色はマシになっていると思うのだけど、やっぱり高校からの付き合いである親友には色々バレてしまうらしい。
だけど優麻は私以上にそういうこと気にしちゃうタイプだから相談したら更に心配をかけてしまうと思うし、今の優麻にそんな不安を抱えさせたくない。
「大丈夫、ちょっと仕事忙しかっただけ。もうひと段落したから」
「そっかー」
良かった、バレてない。私の言葉を信じた彼女につられるように笑顔を浮かべる。
本当は今日も誰とも会いたくない気分だけど優麻の顔を見に来て良かった。一瞬だけでも生瀬さんのことを忘れることができる。
すると彼女は「あ、そうだ」と思い出したように、
「聖くんに聞いたんだけど、亜紀ちゃんも金曜日の同窓会行ってたんだよね? どうだった?」
「え、あー……」
「参加しないって聞いてたから吃驚したよ。会いたい人もいないって言ってたから、どうしたの?」
「……暇だし、たまにはいいかなって」
そう流すと彼女は興味津々に「どうだった!?」と尋ねてくる。優麻はそういうイベントに参加したいタイプだけど今はこんな状態だからタイミングが悪く行くことが出来なかった(その代わりに旦那の神崎が居たわけだけど)。
どうだった、か。正直生瀬さんとの約束がなくなって半分ヤケになってたからご飯の感想しかないんだけど。
「あ、アンタの旦那って相変わらずモテるんだね。めっちゃ女に囲まれてたよ」
「え!? 嘘! そんなの聖くん言ってなかった!」
「言わないでしょ、嫁に。まぁあんまり相手もしてなかったから安心してよ」