君のことは一ミリたりとも【完】
不安にさせるようなことは言わないでおこうと気を遣っていたのに。しかし優麻も自分の旦那が女にモテるのは承知の上なのか、「妬けるなー」と暗い顔をするぐらいだった。
と、
「そういえば爽太くんも来てたらしいんだけど、会った?」
「……」
唐沢、爽太……
「さいっあくだった……」
「え、どうして」
「本当アイツ性格悪いわ。高校の頃から何も変わってないね。アイツが来るって知ってたら同窓会なんて絶対行かなかったのに」
「爽太くんと何があったの……」
思い出しただけど腹が煮え繰り返るわ。雰囲気変わったとか綺麗になったとか気色悪いことばっかり言ってくるわ、罵ったと思ったら「付き合おう」とか変な告白して来るわ。
高校の頃も色々衝突することが多くて顔を合わせるだけで口喧嘩をしていたけれど全く成長のかけらも感じられなかった。見た目だけだな、本当に。
「亜紀ちゃん、昔から爽太くんと仲悪かったもんねー」
「アンタのこと弄んでたからね、アイツ」
「爽太くん優しいよ? この間も会いに来てくれたし」
「それは優麻相手だからだよ。笑顔浮かべてるくせに敵意剥き出しだし、大嫌い」
「顔から敵意剥き出しな亜紀ちゃんも亜紀ちゃんだけどね」
似た者同士だと思うよ?と優麻に言われると何だか返す言葉が見つからない。
とにかくあの夜の唐沢のことは記憶の中から抹消しておこう。