君のことは一ミリたりとも【完】
誰か今現在の話をしろって言ったのよ。しかしその真剣な眼差しに私は視線を逸らしてしまった。
その様子を見て唐沢は興味深そうにテーブルに身を乗り出して私の顔を覗き込む。
「で、あの男のどこが良かったわけ?」
「アンタに関係ないでしょ」
「でも気になる」
「っ、本当に何なのよ!」
声を上げると「ヒステリーなところは相変わらずだね」と指で耳栓をする唐沢。
「やっぱり好きくないなぁ」
「は?」
「なぁんであの時、付き合ってなんて言ったんだろう」
彼は過去の自分の発言について不思議だと首を傾げた。
そう聞きたいのは私の方だ。何のつもりであんなことを口にしたんだ。
私は生瀬さんのことで一杯一杯なのに、そこに何も関係のないアンタが入ってくるな。
「良かったらあの言葉取り下げといてくれる? 俺、アンタみたいな女と付き合う気全くないから」
「むしろこっちから願い下げなんだけど」
「本当に可愛くない女だなぁ。大嫌いだよ」
「っ……」
彼が感心したように呟くと私のイライラはピークに達した。