君のことは一ミリたりとも【完】
「私の方が大嫌い!」
そう言ってテーブルの上に飲み干したコーヒーのカップを叩きつけると鞄を持って立ち上がり、そしてそのまま奴の前から姿を消した。
何なんだ、いきなり相席してきたと思ったらずっと嫌味ばかり言ってきて。金曜日の夜のことを掘り返しては私のことを侮辱してくる。
その上「大嫌い」だと意味の分からないことを言われた。
「(アレくらい、生瀬さんもハッキリ言ってくれたらいいのに……)」
夜風に吹かれながら駅へと向かう中で最後に彼に頭を撫でられたことを思い出す。
最後に優しくされて、撫でられた頭が熱くなる。最後までずっと優しい人だった。
「酷い人……」
私の独り言を拾ってくれる人は誰もいなかった。