君のことは一ミリたりとも【完】
3 勝気な彼女



『私の方が大嫌い!』


また怒らせてしまった。別にあんな顔が見たいわけじゃないのに。
だけど何故か彼女を前にすると自分でも思ってもみなかったことが勝手に口から飛び出す。人に嫌いなどというタイプでもないし、そもそも争い事は避けて通るはずなのに。

それなのに河田さんだけは構わずにはいられない。


「(そもそも何故俺は付き合おうなんか言ったんだろう……)」


休日を経てもその理由は分からずじまいだった。ただあの時俺の知らない男に振られて泣いている河田さんの姿が目に焼き付いて離れなかった。
今までにないくらいに感情を揺さぶられた。血も涙もない人間だとばかり思っていたからそのギャップに驚いたのだろうか。

それにしても「付き合おう」って気が動転しすぎにも程があるだろ。


「……て、ことがあったんだけどどう思う?」


出勤後、仕事に入る前に竹村とコーヒーを飲みながらこの間の出来事について語っていると彼は意外そうな表情をしていた。


「まさかお前から恋愛相談されるとはな」

「恋愛相談? 全くもって俺には好意がないんだけど」

「いやいや、お前どう見ても好きな子を虐めたいガキ大将タイプだと思うぞ」


竹村の言葉に俺は苦虫をすり潰したような顔で「何それ、」と、


「俺が向こうのことめちゃくちゃに好きみたいじゃん」

「だからそうじゃねえの? つまりは彼女を泣かせた相手の男に嫉妬したんだろ、お前」

「嫉妬というか、あの女のこと泣かすなんてすげぇ男だなって思っただけで」



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