君のことは一ミリたりとも【完】
「お前の口から誰が嫌いとか愚痴とか聞くの珍しいからちょっと驚いた」
「……そうかな」
「そうだろー。誰に対しても平等に接するし。まぁ、そこがお前のいいところであり悪いところでもあるけどな」
「悪いところでもあるんだ」
竹村は紙コップの中のコーヒーを全て飲み切ると近くのゴミ箱に器用にシュートした。
「それで困ってる奴、俺知ってるからな」
「……?」
「さーてと、今日もお仕事頑張りますか」
そう言って仕事場へと戻っていく背中を眺めながら「困ってる奴?」と首を傾げた。
昼食、久々に時間が取れたので加奈ちゃんと外で取ることにした。
時たまに男性陣の中で紅一点という立場が辛いだろうから、こうして外に連れ出してあげることは少なくはない。その時は大抵彼女の食べたいものをリクエストで受ける。
今日は最近新しく出来たイタリアンのカフェ。同じ昼食を取りに来たOLや若いカップルで賑わっていたが無事に並ぶことなくテーブルに着くことになった。
「え、爽太先輩それって"こい"ですよ」
「……」
クリームパスタを口に運ぼうとしたところを彼女の声で妨げられた。
「え、そんなにここのパスタ味濃いかな」
「いやいや、そっちの濃いじゃなくて。分かってて言ってますよね」