君のことは一ミリたりとも【完】
流石に自分のことは理解出来てるし、そこまで言われるほど鈍感であるとは思っていないけど。
そう告げると彼女はふと手を止めてお皿の上にフォークを置くとジッとテーブルの前にいる俺の顔を見つめてくる。
何か気に障ったのだろうかと俺も動きを止めると彼女と正面から向き合った。
「じゃあ言いますけど、私が先輩のこと好きだって気が付いてます?」
「……」
彼女の口から放たれた言葉に思わずフォークを地面に落としてしまい、金属音が店内に響き渡った。
暫くして店のスタッフが換えのフォークを持ってきたが、それを受け取ってもなお俺は彼女の言葉の意味を理解するのに必死だった。
漸く口から出てきたのは、
「……ごめんなさい、全然気が付きませんでした」
「でしょう? 二度と自分が鈍感じゃないって言わないでくださいね」
「ハイ……いや、なんかごめんね。今の話全然面白くなかったでしょ」
「それはちゃんと分かってるんですね」
歳下の女の子にタジタジになっている俺に加奈ちゃんはふふっと可笑しく笑う。
「いいですよ、その代わりに今日のお昼御飯は奢ってくださいね」
「今日のお昼御飯"も"の間違いでは?」
「何か?」
「いえ……」
完全に弱みを握られてしまった。その後の昼食はひたすらに俺が彼女を気遣うスタンスが取られた。