君のことは一ミリたりとも【完】













「(確かに他の奴らよりは懐かれているなとは思っていたけれど……)」


メイクを直してくるとお手洗いに向かった加奈ちゃんと別れ、先に編集部に帰った。
あれから彼女の様子はいつもと変わらなかったけれどこっちが変に意識して仕事にまで支障が出てしまいそうだ。

ていうか自分のことを好きだという女の子の前でよく何十分も他の女の話が出来たな、俺。


「おー、おかえり。この間言ってた取材のアポ取れたらしいぞ」

「そう、それは良かった」

「なんか疲れてないか?」

「気のせいじゃない?」


加奈ちゃんはいい子だけど、好きになるとかとはまた違うから対応が難しいな。
気を取り直して仕事に取り掛かろうと竹村から取材内容について伺う。前々から企画していた最近功績を挙げている成長企業についての取材だった。

ウチの雑誌は常にビジネスの最先端を掲載することをテーマに持ち上げているために割りかし若めの経営者への取材も多い。


「ここの会社、今結構有名なところらしいぞ。ファッションショーとか遊園地とかでコラボしまくってて若者のトレンドを取り入れたイベントのプロデュースが売りらしい」

「ふーん、ここから近いじゃん」


自分のパソコンに竹村からアポが取れたという会社のデータを送ってもらう。
そこに書かれている詳細に目を通していた時、俺はとある写真に目を止めた。


「え、」


基本的に話題になった情報などは職業柄頭の中に入れている。
だからあの時何故が見覚えがあるように感じたのか。






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