君のことは一ミリたりとも【完】













午前中にした取材の内容をまとめ、記事を製作していると仕事場に置かれているテレビから聞き覚えのある名前が聞こえた。


《では本日のゲストは東京フラワーフェスのプロデューサーを務めた生瀬俊彦さんです》


BGM代わりに流れていたのは夕方のワイドショーで、今度開かれる花の祭典の特集が組まれていた。
そこに出てきたのはその祭典を手掛けたと言われる生瀬の姿。


「お、こういうテレビにも出てくるんだ。取材のアポ取れてよかったなー」

「イケメンだから画面映えしますね」


竹村や加奈ちゃんも知っている顔だと興味を持ったのか、その生放送に目線をやる。
司会の男性アナウンサーと話す生瀬はテレビだとは思えないくらい落ち着いているように思えた。


《フラワーフェスは毎年5万人の来場者を記録している毎年恒例のイベントですが、そのプロデュースは大変でしょうね》

《そうですね、歴史があるイベントですし正直プレッシャーは感じております。しかし折角選んでくださったということで来てくださるお客様たちに喜んでもらえる催しを考えております》


テレビの中で動いている生瀬の姿を見て確信する。間違いない、あの夜に河田さんと一緒にいたのはこの男だ。
そしてその左手の薬指に嵌められたシルバーの指輪にスッと視線を避けた。


《是非ご家族や恋人同士で来ていただけると嬉しいです。このイベントが無事成功に繋がるように頑張らせていただきます》

《東京フラワーフェスは今週の土曜日から1ヶ月間での開催となっております。休みの日に花や木に癒されてみてはいかがでしょうか。生瀬さん、本日はありがとうございました》

《ありがとうございました》


特集を最後まで見た竹村が「うーん」と手で顎をさすった。





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