君のことは一ミリたりとも【完】
そう答えると彼は「マジか!」と嬉しそうに声を上げた。
「ほら言ったろ! お前絶対に好きだったんだって!」
「……確かに好きだったけどお前に言われるとなんか腹立つ」
「やっと素直になったんだな。いや、あの反応どう見てももう好きだったしな」
他人にそこまで言われるとは、そんなに分かりやすかったのだろうか。
いや、でも俺は確かにこの間までは河田さんのことを間違いなく嫌っていたし、同窓会で再会するまではそこまで気にも留めていなかった。
だけど好きだと気が付いた今、彼女のことを愛おしくて堪らない。
そんなことが実際にあるんだろうか。
「分かる、好きって気が付いたらもうどっぷりだもんな」
「俺何も言ってないけど」
「で、どんな子なんだ? お前が好きになるとかすげぇ気になるんだけど」
どんな子と言われても河田さんのことを一言で説明するのは難しい。
見た目は可愛いけれどツンケンしてて猫みたいな性格で、ある一定の人にしか懐かなくて、
「好きなものを否定されると逆上するような面倒な子。思春期真っ盛りみたいな」
だけどその分、好きなものには一直線だ。
そのことは恥ずかしいから口には出さずに自分の心の中にだけ留めた。
「(昔から……そうだったな……)」
高校の時、河田さんは陸上部の短距離選手だった。
聖と勉強するために教室に残っている時にたまに彼女が走っている姿を窓から見ていた。