君のことは一ミリたりとも【完】




『もし、好きだって言ったらどうする?』

『俺以外の男に泣かされてる河田さんは見たくない』

『やっぱり俺と付き合おうよ』


何がどうしてこうなってしまったんだろう。
私たち二人の高校時代を知っている人なら尚更そう思うのではないだろうか。

学生時代、私と唐沢は仲が悪かった。それはもう顔を合わせると口喧嘩を始めるくらいには。
理由はあるのだけど、彼の掴めない空気感や飄々とした態度に振り回されることが悔しかったのだろう。

そもそも、あの時アイツが好きだったのは……


「(本当に本気なのだとしたら……)」


私は彼に気持ちに向き合わなければならないのか。



打ち合わせは次に監修することになったイベント会場の確認だった。生瀬さんのネームバリューもあってか、うちの会社はありがたいことに様々な企業のイベント依頼がやってくる。
きっとフラワーフェスで更に彼の名前が世間に知られるようになるだろうから、もっと仕事が舞い込んできて忙しくなりそうだ。


「亜紀ー、今向こうの方まで見てきたけど天井も高いしオブジェ置いても大丈夫そうだった」

「そっか、じゃあクライアントに伝えてオブジェ製作を進めてもらおう」


次に担当するイベントは子供向けの簡易遊園地だった。有名なおもちゃメーカーが一週間限定で開催するイベントで規模も大きく、一週間でも1万人以上の来場客数を見込める。
だからこそ失敗は許されない。部下の失敗は代表である生瀬さんの責任になる。

そのためにも会場の確認を念入りに行うために打ち合わせと合わせて菅沼とやってきていたのだ。


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