クールな社長の溺甘プロポーズ
「だから、星乃が笑えないときはそのこころに寄り添いたいと思うし、不安も悲しみも可能な限り取り除いてやりたい。星乃のことを、愛しいと思うから」
相変わらず、体温の低い手。
だけどしっかりと握るその力強さに、熱が上がりそうになる。
こんな私なのに。それでも彼は、心に触れる。
向き合おうと、理解しようとしてくれる。
私は、知っている。
どんなに響きのいい言葉を並べる人も結局はみんな同じだということ。
信じてもどうせ裏切られる。理解したふりで、本当にわかってなんてもらえない。
こわい。
だけど、あなたならきっと、そう信じたいから。
勇気をふりしぼるように、その手を自らきゅっと握る。
「……昨日、偶然友達と会ったの」
「友達?」
「元友達っていうか、なんていうか」
頭に昨夜の景色を思い浮かべると、また喉が詰まるような息苦しさを感じる。
それを誤魔化すように、えへへと空元気で笑う。
「前付き合ってた彼氏がその子と浮気しててさ。結局私は、彼氏も友達も失くしちゃった」
この半年、家族にも仲のいい友達にも、会社の人にも、誰にも言えなかったこと。
情けない、かっこ悪い私の話。
「彼は私の仕事に理解もあって、いつも『頑張って』って送り出してくれた。けど、別れ際に言われたんだ。『本当はいつも寂しかった』って」
「だからといって、浮気していい理由にはならないけどな」
「そうだよね、正当化しようとするなって感じ」
言いたいことを代わりに口にしてくれた彼に、笑って頷く。
「だけど、私全く気づいてなかったんだなってそのときようやく思い知った」
彼がどんな気持ちで私を送り出していたのか、それを思うと浮気のことも強く責められなかった。