クールな社長の溺甘プロポーズ
それからほどなくして、イルカショーは始まった。
その間も、ふたりの手はつないだまま。
大倉さんの大きな手の感触と体温、そして目の前を飛ぶ大きなイルカと輝く水しぶき。
キラキラと光るその景色に、この穏やかな時間が永遠に続けばいいのに、なんて願う自分がいた。
「はぁ……イルカショー、圧巻だった」
ショーを見終え、続々と席を立つ人々に続き私たちも席を立つ。
「星乃、終盤感極まってたな」
「そりゃあ感動するでしょ!イルカと人間があそこまで通じ合うなんて!むしろどうして真顔でいられるの!?」
ゆらゆらと泳ぐ魚も綺麗で好きだけれど、水族館の醍醐味はやっぱりこれだよね。
いつ見てもやっぱり素敵だ。
大倉さんと肩を並べ歩きながらも先ほどのショーを思い出すと、再びじーんと感動してしまう。
そんな中、ふと時間を思いだし腕時計を確認すると、時刻は14時を過ぎていた。
「あ、そろそろ行く?大倉さん確か夕方から会社でしょ?」
「そうだな。じゃあ行くか」
今朝の会話を思いだし、せまる時間に足を出口の方向へと向けた。
そうだ、今日はもう帰らなきゃいけないんだよね。
少しの寂しさを感じながらもそれを飲み込み歩き出す。
すると突然、大倉さんは通路の端で足を止めた。
「星乃、手」
「手?」
手って、なんで?
不思議に思いながら言われた通りに右手を差し出す。
するとそこに、大倉さんはジャケットのポケットから取り出した、手のひらほどの大きさの袋をのせた。