クールな社長の溺甘プロポーズ
「一週間も毎日澤口と一緒か。飽きるなー」
「あ、じゃあ私会社に残るので部長と一緒に行きます?」
「いやぁ澤口とふたり嬉しいな!」
意地悪く言ってみせる私に、米田さんは慌てて撤回する。
「じゃあ、明後日は東京駅に8時で。寝坊するなよ」
そしてそう言うと、爽やかな香水の香りを残して彼は部屋をあとにした。
相変わらずいい香りだ。
鼻をくすぐるメンズ用の香水に、女子たちが『米田さんの残り香はイケメンの香り』と騒いでいるのを思い出し、つい苦笑いがこぼれた。
「米田さんと一週間出張なんていいなぁ。うらやましいです」
すると、続いて声をかけてきたのは後輩の女の子。
それまでの私たちのやりとりを見ていたらしく、うらやましげに口を尖らせる。
「そう?一週間仕事づくめだけど」
「でもあんなイケメンとの出張ならつらさも吹っ飛んじゃいますよー!ふたりで移動して、ご飯食べたりしちゃって、ついお酒飲んじゃったりして勢いで……きゃー!」
いやいや、ないから……。
ドラマのような展開を想像しているのだろうか。にやけた顔でキャーキャーはしゃぐ彼女に、苦い顔で首を横に振る。