クールな社長の溺甘プロポーズ
「そうか、わかった」
ところが。
その日の夜にレストランでともに食事をとりながら、出張の話をした私に対し、大倉さんから返されたのはその短いひと言だった。
「……って、それだけ?」
「それ以外に言葉があるか?」
真顔で返されるその言葉に、言い返せずに「ぐっ」と言葉を飲み込む。
そうだけど、そりゃあそうなんだけどさ……!
「あ、そうだ。星乃の家にハウスキーパーは一応呼んでおこう。一週間閉め切りはまずいからな」
「そーですね……」
少しでも、なにか反応を期待した自分がバカだった。
大倉さんが『寂しい』とか、そんなふうに応えるわけがなかったのに。
明らかにしゅん、としてしまう私に、大倉さんはテーブルの上のグラスを手にふっと笑う。
「なんだ、寂しいのか?」
「は!?」
さ、寂しい!?私が!?
いきなりなにを言うのかという驚きと、図星を突かれた気がする恥ずかしさからつい声が大きくなる。
「そんなわけないでしょ。せっかく東北に行くんだし、美味しいものもいっぱい食べて超楽しんでくるんだから」
「そうか。それはよかったな」
この余裕っぷり……!
少しでも期待した自分がむなしいとかより、なんだか腹が立ってきた。
寂しいだなんて意地でも思ってやらない。
仕事のことだけ考えて過ごすんだから!