クールな社長の溺甘プロポーズ
「も、もしもし?」
『俺だ。今大丈夫か?』
スマートフォンから聞こえてくる低い声に、少し緊張してしまう。
「え、えぇ。いいけど、どうかしたの?」
『どうかしたわけでもないけど。会う予定の日だしと思って電話してみた。会えない上に声も聞けないとなれば寂しいからな』
寂しい、そのひと言に一瞬喜びそうになる自分を必死に落ち着ける。
「別に、寂しくなんてないし」
『そうか。俺は寂しいけど』
「え!?」
さ、寂しい?大倉さんが?
なんで、いきなりそんなこと……。
「……この前は余裕そうな顔してたじゃない」
かわいげのないことを言ってしまう私に、電話の向こうの彼が小さく笑うのが聞こえた。
『生憎、顔には出ない方でな』
出ない、のか出さなかった、のかはわからない。けどきっと、私の反応をひとり心の中で楽しんでいたのだと思う。
相変わらず、彼のペースで悔しい。
『けど、たまにはこうして電話もいいな。星乃の声が、近い』
……けれど、不意打ちのそのひと言に、胸はきゅん、と音を立てた。
声が、近い。
それは私にとっても同じで、彼の低い声が耳のすぐそばで響いて、くすぐったい。