クールな社長の溺甘プロポーズ



「……私、来週の木曜の夕方には東京に戻るから」

『そうか。じゃあその日、食事でも行くか。店予約しておく。一週間ぶりに会えるの、楽しみにしてる』



そんな、甘い言葉で喜ばせようとしてるの分かってる。

分かってる、けど。

嬉しいと思えてしまうのは、どうしてだろう。



「……おやすみ、なさい」



『私も』という言葉を飲み込んで、それだけを言って電話を切った。

ホーム画面に戻ったスマートフォンを見つめて、「はぁ」と緊張が解けた。



なんでいちいち、そうやって、上手いことばかり言うんだか。

でも、思えば出張に行くのに嫌な顔をしなかっただけではなく、こうして寂しさを伝えてくれたのは大倉さんが初めてかもしれない。



「楽しみにしてる……か」



その言葉に、一週間頑張れそうな気がした。



一週間後に会うの、楽しみにしてる。

……私も、少しだけ。




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