クールな社長の溺甘プロポーズ



「土佐店長。お疲れ様です、どうかしましたか?」

「お疲れ様です。あの、来ていただいて早々で申し訳ないんですけれどご相談が……」



ひどく焦った様子の彼女に、上のフロアへ行こうとした米田さんも思わず足を止めて一緒に店内へ入って行く。



「実は今日私ともうひとりの子、ふたりでのシフトだったんですけど、その子が急遽欠勤になってしまって」

「えっ!他のスタッフは?」

「今日はたまたま全員出られなくて。でも今日はここのビルのポイント3倍デーだから絶対混むし……私ひとりじゃ無理です〜!もうどうしたらいいですかぁ〜!」



近場に店舗があればそこから人を借りることもできる。けど、この近くには店舗はないし、さらに今からとなると難しいし……。

けど、忙しい日に店長ひとりでは回せないだろう。売上を逃してしまうどころか、一日中ひとりではトイレすらも行けやしない。



一応私も売り場に立つことは出来る。元々販売員だし、もちろん商品知識も頭に入っている。

けど、ここを夜まで手伝ったら帰りは終電……いや、それどころか明日の始発。

大倉さんとの約束は、守れなくなってしまう。



……どうしよう。

これまでだったら、絶対迷わなかったのに。

だけど



『楽しみにしてる』



その大倉さんの声を思い出すと、すぐには頷けない。


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