クールな社長の溺甘プロポーズ



「そういえば昨日家デートだったんでしょ?どうだったの?」

「んー……正直、ダメかも」

「えー?なんでー?」



それは、片方の女性の恋愛話らしい。

他人様の会話に聞き耳をたてるのはあまりよくない、そうわかっていてもつい意識をそちらへ向けてしまう。



「彼の家行ったらすっごく散らかってて!一緒に住んだら私がいちいち片付けなきゃいけないのかなとか考えちゃって。なんか無理!」

「あー、家って結構性格とか趣味とか出るもんね」



家……。

そういえば私、大倉さんがどんなところに住んでいるのか知らないや。

それどころかプライベートな一面を全く知らない。



……私も、もっといろいろ知りたい。かも。



そう考えていると、スマートフォンがヴー、と短く震える。

見ればそれは、タイミングよく大倉さんからのメッセージだった。



ちょうど向こうもお昼休みなのだろう。【今夜はどこに行きたい?】と絵文字のない一文が彼らしい。

いつもなら自分でお店決めるけど、たまにこうして聞いてくるんだよね。

今日は、そうだなぁ。フレンチ、和食、イタリアン……いや、ここは思い切って。



【大倉さんの家】

勇気を出して、その一文を入力し送信を押す。



お、送っちゃった……。

家に行きたい、なんてなにを言い出すんだと引かれたらどうしよう。



はっ、いや、家に行きたいのはそういう意味じゃなくて。ただ大倉さんのことをもっと知りたいというだけで……。

あぁ、『家に来たいってことは、わかってるな?』とニヤリと笑う彼が想像つく。



するとほどなくして【わかった】と短い返信がきた。

わかった、ってことはいいってこと?引かれてはないようでよかった。

そう安心していると、突然着信が鳴り出す。


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