クールな社長の溺甘プロポーズ



先日、わざわざ来てくれた彼に、今度は自分から距離を詰めたいと思った。

大きな心境の変化を知られてしまうのは、恥ずかしい。けれど、知ってほしいとも思うんだ。

あなたに、もっと近づきたいと思うこの心を。



『……悪いな。じゃあ、六本木の本社に来てくれ。ロビーで待っててくれればいいから』



それを感じ取れたのか、大倉さんは遠慮なく受け入れる。

すると電話の向こうからは誰かがきた声と、『あれ、大倉社長ここにいたんですか?』という男性の声が聞こえてくる。

やっぱり会社の人に隠れて連絡をしていたんだ。じゃあまた、と通話を終えようとした時、バタバタとなにやら騒がしい音がした。



『もう、さっきはびっくりしちゃいましたよ。彼女とメールしてると思ったらいきなりコーヒー落として……あれ、すみません電話中でした?』



その声を遮るように、プチッと通話は切れた。



切られた……。今の秘書かなにかかな。

ていうかコーヒー落とすって、よほど衝撃的だったのだろうか。



引かれて、ないよね。

近づく距離を、彼も嬉しく思ってくれたらいいな、なんて。

そんなことを思いながら飲んだカフェラテは、やはりとても甘かった。





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