クールな社長の溺甘プロポーズ
その日の18時過ぎ。
仕事を終え品川を出た私の姿は、六本木の街にあった。
「ここだ……」
目の前には、うちの会社のあるビルと同じくらいの大きさの建物がどんと構えている。
ただし違うのは、このビル丸々がオオクラ自動車の本社ビルだということ。
ショールームも備えているとはいえ、会社ひとつでこの大きさは圧巻だ。
気が引けてしまいながら、恐る恐る建物へ足を踏み入れると、そこには広々としたロビーがあった。
高そうなスーツを身にまとったサラリーマンや、商談に来た様子の外国人、美人なOL集団……。
私服姿の自分に居づらさを感じてしまい、ロビーの端のベンチに腰をかけた。
大倉さん、そのうち来るかな。それとも、『ついたよ』ってひと言メッセージを送るべきだろうか。
吹き抜けになったロビーの天井を見上げ考えていると、奥のエレベーターがポンと音を立てた。
ぞろぞろと人が降りて来る中、大倉さんがいるのが見えた。
見慣れたスーツ姿に茶色い鞄、首からは社員証を下げている。
ちょうどあがった時間らしい。タイミングばっちりだ。
「大倉さ……」
「あっ、大倉社長!待ってくださいよー!」
彼の名前を呼ぼうとするけれど、背後から来た女性たちの声にかき消されてしまう。
見れば、もうひとつのエレベーターから出てきた若い女性たちが、大倉さんを追いかけている。