クールな社長の溺甘プロポーズ



「彼、よくできた秘書ね」

「あぁ。普段はド天然だけどな」



大倉さんの言葉に「ふふ」と笑っていると、彼はそんな私を見てぽん、とまた頭を撫でた。



「なに?」

「いや、気分を悪くさせて悪かったな。彼女たちにはよく言っておく」



それは先ほどの彼女たちの発言を言っているのだろう。



『大倉社長ならもっといい人見つかるんじゃないですかぁ?』

その言葉を思い出すと、胸がまたチクリと痛む。けれど、それを隠すように笑ってみせる。



「別にいいわ。社長直々に注意なんてされたら大事になっちゃうし、せっかく村上さんが上手く場を収めてくれたんだから」



気にしないで、と笑う私に、大倉さんはなにかを言いたそうな、けれど自分自身を納得させるように言葉を飲み込むと私の頭をぐしゃぐしゃと撫で乱した。





大倉さんと会社を出て、車で15分ほど走り、やってきたのは恵比寿にある住宅街だ。

立派な家やマンションが立ち並ぶ、閑静な住宅街。

その中でも一際目立つ立派な高層マンションに大倉さんは慣れた様子で入っていくと、車を停め、建物内へ踏み込む。



入ってすぐのエントランスは、真っ白な床に黒い壁とモノトーンの配色でスマートな高級感を感じさせる。

制服姿のコンシェルジュに出迎えられ、大きなエレベーターに乗り込むと、彼は25階まであるうちの23のボタンを押した。



しばらくして着いた23階で、長い廊下を歩くと、ひとつのドアの前で足を止めた。



茶色いドアの鍵を開け中を見れば、ホコリひとつ落ちていない廊下がある。

用意されたスリッパに足を通し、廊下を抜ければ、広々としたリビングダイニングが広がっていた。



< 136 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop