クールな社長の溺甘プロポーズ
私みたいなのと結婚なんてして大丈夫なんだろうか。なんて、無意識に考えた自分に驚いた。
……な、ないない。結婚なんて。
さっき大倉さんの会社の女の子たちだって言っていたじゃない。
そう。立派な会社に勤めて、仕事もできるだろうし、人望もあるだろう。
こんな立派な家に住んで、それでも驕ることなく彼自身もしっかりとした人だ。
出来すぎて私の結婚相手にはもったいない。
心の中でつぶやくほど、先ほどよりいっそう強く、胸の痛みを感じた。
バッグを部屋の端に置いて、窓際へ立ちそこから広がる夜景を見る。
住宅街やビル、商業施設などの明かりがキラキラと輝くその景色は、高さのない私の部屋からは見えないもの。
それがまた、彼を別世界の人に思わせた。
「星乃?どうかしたのか?」
背後から呼ばれて振り返ると、カップを手にした大倉さんが不思議そうにこちらを見ていた。
淹れたてのコーヒーの濃い香りが室内に漂う中、彼はテーブルにカップをふたつ置く。
「立派な家だと思って。景色も素敵ね」
「そうか?俺は星乃の家も生活感があって落ち着くけどな」
小さく笑って言いながら、自分のことをひけらかしたり、自分と比べて否定をしたりしないところが、大倉さんらしい。
最初に会った頃より雰囲気も柔らかくなっている気がするし、正直欠点や文句のつけどころがない。
「大倉さんはすごいのね」
ぼそ、とつぶやいた言葉に、大倉さんは不思議そうな顔でこちらを見る。
「優秀で、しっかりしてて、会社でも立場がある。そんなあなたなら、他にいくらでも相手を見つけられると思うけど」
少し、嫌味っぽい言い方になってしまったかもしれない。
けれど、これは今の私の本心だ。