クールな社長の溺甘プロポーズ
「そんな言い方しない。確かに周囲にも恵まれたかもしれないけど、大倉さんだって頑張ったんでしょ」
目と目をしっかりと合わせて言った言葉に、彼は驚いた顔をしてみせる。
「環境に甘えず頑張ったから、だから今があるんでしょ。それはすごいことなんだから、自分の努力を否定しちゃダメ」
自分を見てくれた人へその気持ちを返したくて、勉強をして、会社を継いで社長という役職につくまでになった。
どんなことが動機だって、今の大倉さんは、これまでの大倉さんが頑張った成果だってことには変わりないから。
『すごいのは俺じゃない』なんて、否定しちゃダメだよ。
「大倉さんは、すごいよ」
その言葉とともに、自然と笑みがこぼれた。
それは、私の胸の中にある本当の気持ち。
あなたは、すごい人。
努力の、人。
そう伝わってほしいから。
「なんて、私に言われても嬉しくないかもしれないけど」
へへ、と笑ってその頬から手を離した。
すると大倉さんは、突然こちらへ手を伸ばして体をそっと抱き寄せる。
「わっ、大倉さん?」
い、いきなりなにを……!
戸惑い逃げようとしてしまうけれど、離さない、とでもいうかのようにその腕はしっかりと私を抱きしめた。
「星乃の真っ直ぐさは相変わらずだな」
耳のすぐそばで低い声が響いて、胸をどきっとさせる。
「星乃のそういうところが、愛しい」
心からそう思っているように柔らかな声を出すから、それ以上抵抗は出来ず、その胸の中に身を委ねた。