クールな社長の溺甘プロポーズ



愛しい、なんてそんな言葉反則だ。



そんなふうに、優しい声で甘いことを言われたら、恩だとか父の存在だとか、そういうことが頭から抜けてしまう。

もしかしたら、その心にあるのは恩だけじゃないのかも、なんて都合のいいことばかりを考えてしまう。



図々しいのはわかってる。

けど、この腕の居心地の良さに浸ってしまう。



すると大倉さんは少しだけ腕の力を緩めたかと思えば、首元に顔をうずめ、首筋にそっとキスをした。



「ん……」



ぞく、と感じるくすぐったさに思わず声を漏らすと、その唇は上へのぼる。

左手は私の腰を抱き、右手は頬に添えられる。



「……星乃」



低い声で名前を囁いて、耳を軽く甘噛みした。その感覚に「ひゃっ」と高い声が出た。



「男の部屋に来た、ということはなにをされても文句言わないな?」

「へ?」



なにをされても、って……いや、それは待って!

その言葉にふと我に返り、私はその体を思いきり離す。



「ちょ、ちょっと待って!そういうのは、あの、なんというか!」



仮の恋人というこの状況でそういう関係に進むのはよくないと思う!!

心の準備もできていないし、と真っ赤な顔で慌てると、彼からは「ぶっ」と吹き出す声が聞こえた。



……あれ、今、吹き出した?

見れば目の前の彼は、右手で自分の口元を隠しながら、肩を震わせ必死に笑いを堪えている。



「……意外とピュアだな」



その反応と言葉から、自分がからかわれたことに気付いた。


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