クールな社長の溺甘プロポーズ
それぞれにホットコーヒーを飲みながら、カフェの端の席で私はこれまでの大倉さんとのことを正直に話した。
父の会社と大倉さんの会社が取引先であることから、彼はプロポーズをしてきたこと。
彼は父へ恩を感じていること。
だからこそ、どんなワガママにも応えてくれること。
「……はぁ?」
全てを聞き終え、彼は意味がわからなそうに間抜けな声を出した。
「なんだそれ……つーかお前の親社長なの?すごくないか?」
「いや、そこじゃなくて」
そもそも父親が社長だという話を知らなかった米田さんは、ただただ驚く。
その反応を見ながら、私はホットコーヒーをひと口飲むと、話を続けた。
「大倉さんとの経緯は今話した通りで……だから、このまま結婚していいのかなって、迷ってるんです」
最初のままの気持ちだったら、こんな風に迷ったりしなかった。
だけど今は、彼の優しさやあたたかさを知ってしまったから。
拒むこと、跳ね除けることが、できない。
そう迷いを吐き出す私に、米田さんはコーヒーを片手につぶやいた。
「俺が澤口の立場だったら、結婚しない。そこまで迷う理由も正直わからないな」
「え……?」
「会社と恩人のために結婚、なんて悪い理由ではないけどさ。けどそれって、澤口のことが好きなわけではないだろ」
私のことを好きなわけではない。
米田さんの冷静なその言葉が胸にずしりと響く。