クールな社長の溺甘プロポーズ



すっきりとしない気持ちのまま1日仕事に追われ、今日もあっという間に定時を迎えた。



「お疲れ」

「……お疲れ様」



今日もまたエントランスまで迎えに来た大倉さんの顔を見ると、今朝の米田さんの言葉を思い出してしまい、胸がズキと痛んだ。

けれど、それを隠して口角を上げてみせる。



「いい店、とやらは見つかったの?」

「あぁ。もちろんだ」



それに気づくことなく頷く大倉さんとともに、いつものように車に乗る。

そして少しの時間走り停まった先で車を降りれば、目の前には50階はあるだろう大きな建物がそびえる。



【ハイグレードパーク東京】というそのホテルは、普段縁のない私でも知るくらい有名な高級ホテルだ。



400部屋近くある客室に、レストランや婚礼・宴会用ホール、スパにフィットネスを備えている。

さらにアメニティひとつひとつも有名ブランドを使用するこだわりを見せることで、国内外の芸能人やセレブに人気だ。

ちなみにスイートルームは一泊十数万と聞いたことがある。



大きなシャンデリアが輝き眩しいくらいのロビーで、私は唖然と周囲を見渡した。



私には縁がなさすぎて、別世界……。



まるで漫画やドラマのセレブの世界。

けれどそんな中でも、スーツ姿の大倉さんは見劣りすることなく、むしろ似合うくらいだ。

一方で、薄手のブルゾンを肩にかけた私服姿の私は、この空間で完全に浮いている。


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