クールな社長の溺甘プロポーズ



「個室なら、星乃も周りの視線が気にならないだろう」

「え?」



それは、私のことを思ってこの席を選んでくれた証。



彼はきっと、自分や私が周りにどう見えているかなんて気にならないのだと思う。

けれど、私は気にしてしまうほうだとわかっているから、こうしてふたりゆっくりできる席を用意してくれた。

その気遣いが、またちょっと嬉しい。

本当に、なんでもお見通しだ。



「お食事はコースでお持ちいたします。お飲物はお決まりですか?」



ウェイターからの問いかけに、大倉さんは縦長のメニュー表を私に差し出す。



「俺はミネラルウォーターで。星乃は?」

「白ワイン、辛口で。お任せでお願いします」



メニューを見ても横文字でよくわからない。お任せしちゃおう。

注文を受けその場を後にするウェイターに、個室にはふたりきりになりふと気付いた。



「ねぇ、大倉さんいつもノンアルコールだけどいいの?たまには飲みたい時とかない?」

「ない。一切ない」



ばっさりと即答されてしまった。

けど、あれ……この反応はもしかして。



「もしかして、お酒苦手?」



問いかけると、大倉さんは無言で顔を背ける。



あ、図星なんだ。

車だから飲まないのかとも思ってたんだけど、そうじゃなくてそもそもお酒が苦手なんだ。



大倉さんのこの見た目で、お酒が苦手……意外すぎる。

そう思うと、こらえきれずつい「ぷっ」と吹き出してしまった。

そんな私の反応に、大倉さんは少し恥ずかしそうにこちらをじろりと睨む。


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