クールな社長の溺甘プロポーズ
「あはは、ごめん。だって意外すぎて」
「そんなに意外か?」
「うん。だってワインどころか日本酒だっていけます、って顔して苦手って!ギャップありすぎ」
恥ずかしそうに不機嫌になる表情がまたかわいくて、いっそう笑ってしまう。
初めて知る苦手なもの、初めて見る恥ずかしそうな表情。
それらに、また彼のことを知り近づけた気がする。
縮まる距離が、嬉しい。
それから運ばれてきたグラスを手に取り、ふたり軽く乾杯をした。
そのうち運ばれてきた前菜は、白いお皿にオシャレに飾られた、アボカドとサーモン。
トマトジュレのソースが円を描くようにかけられていて素敵だ。
それをひと口食べると、向かいの大倉さんをちら、と見た。
器用にナイフとフォークを使いこなす、その仕草ひとつも品がある。
テーブルマナーも慣れてるなぁ。
仕事の付き合いとかで食事に行くのかな。それとも……以前付き合っていた人と来た、とか?
そんなことを考えてしまい、胸がチクリと痛くなる。
……そういえば私、大倉さんの恋愛関係の話もなにも知らないや。
あなたのことが、もっと知りたい
その目に映るのが、私じゃなくても。
「大倉さんは、これまで彼女とかいたの?」
「……なんの話だ、いきなり」
「いいでしょ。知りたいの」
じっと見て答えを待つと、大倉さんは答えづらそうに髪をかいて、口を開く。
「何人かは、いた」
「へぇ、一番最近は?」
「1年くらい前に別れたきりだ」
結構時間空いてるんだ。
どんな人だったのとか、どれくらい付き合ったのとか詳しく聞きたい気もするけれど、あまり根掘り葉掘り聞くのもどうかと思い質問をしぼることにした。