クールな社長の溺甘プロポーズ



そんな思いを紛らわせるようにワインを飲んではおかわりを繰り返し……。

『大丈夫なのか』と制止する彼の言葉を聞かずに続けた結果、ディナーを終える頃には私はフラフラになっていた。



「だから何度も止めただろ」

「うるさい……どうせあとはもう帰るだけだし!平気!」



呆れ顔の大倉さんに強い口調で言うと、膝に乗せていた紙ナフキンを雑にテーブルに置き、席を立つ。

ところが自分で思う以上に酔いは回ってしまっているようで、私の体はぐらりと後ろへよろける。



「おっと」



大倉さんはすかさず腕で肩を抱き、受け止めた。



「平気、ではなさそうだな」



うるさい、と反論したいけれど自力で立つ気力すらもなく彼の腕に支えられたまま寄りかかる。

すると大倉さんは、そのまま私の体をお姫様だっこの形で持ち上げた。



「ひゃっ、いきなりなに……」

「歩けないんだから仕方ない。車までこのまま連れていく」



このまま、って……!

こんな格好、恥ずかしい。持ち上げられることで体重だって知られてしまうし、正直降りたい。

けれど、有無を言わさぬようにその腕はしっかりとした力で私の体を抱えている。



悔しいけど、安心する。

彼の体温に触れ、こみ上げるのはドキ、というときめきと安心感。



……それと、気の緩みと酔いからくる、強烈な吐き気。



「……うっ、きもちわるい」

「は!?」

「吐く……きもちわるい、吐く」



一気に吐き気に襲われ、意識が遠のいていく。

けれど、その間も彼の腕がしっかりと私を抱きかかえてくれていた体温を感じた。



心地、いい。

大倉さんの香りが、優しい手が、安心するなぁ。

穏やかな気持ちに、なっていく。




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