クールな社長の溺甘プロポーズ



「悪かったわね。けど、大倉さん以外の前ではもっと控えめに飲むもの」



他の人の前では、ここまで油断なんてしない。

その私の言葉に、彼は少し驚いた顔をして私を見た。



「それは、どういう意味で受け取っていいんだ?」



そして大倉さんは立ち上がると、こちらへ近づき、体を屈ませベッドへ手をついた。

目の前に迫る彼から真っ直ぐに向けられる視線から、逃げられない。



「どういうって……その」



返す言葉もしどろもどろになってしまう私に、大倉さんは顔を近づけ、そっと額と額を合わせる。



鼻の先が触れるほど距離は近く、少し動けば唇も触れてしまいそう。

肌にかかる熱い息が、余計この心拍数を上げる。



「俺は無茶な飲み方をしても手出ししないだろうと舐められているのか。……それとも安心してくれてる、特別視してくれてると、自惚れてもいいか?」



安心感、特別視。

どうしてそんなにも、私の心の中を言い当ててしまうの。



これ以上胸の内を知られてしまうのが恥ずかしくて、その目を見れずに視線を外す。

けれど、それでもまだ彼は逃してはくれない。

右手はベッドについたまま、左手でそっと頬を撫でる。



「星乃。キス、してもいいか?」



低い声が囁くひと言に、胸はドキ、と一段と強く揺れる。



「だ、ダメに決まってるでしょ」

「なんで?恋人だろ?」



ダメに決まってる。

だって、大倉さんが見ているのは私じゃない。

一緒にいる理由は、お父さんへの恩。



それを忘れてしまわぬように。

これ以上この心が勘違いをしてしまわぬように。


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