クールな社長の溺甘プロポーズ
◆10.終わりにしましょう
彼のキスに溶けるように、意識を手放した。
微睡みの中、抱きしめてくれている彼の硬い腕の感触だけは確かに感じていて、その体温に愛しさを覚えた。
あなたとだから、一緒にいたい。
強く強く、そう思ったんだ。
眩しい光にそっと目を覚ますと、窓際の白いカーテンは太陽に透けていた。
もう、朝……。
重い頭をゆっくり起こし室内を見回すと、ベッドから少し離れたところにあるテーブル席には、ノートパソコンを開きコーヒーを飲む大倉さんの姿があった。
大倉さんは私が起きた気配を感じたようで、こちらを振り向く。
「起きたか。おはよう、気分はどうだ?」
「最悪……」
「だろうな。二日酔いの薬用意しておいたぞ」
朝からひと仕事していたのか、パソコンを閉じると、彼は薬の箱を手にこちらへ近づく。
「ありがと」とそれを受け取りながら、彼の左手首につけられた高そうな腕時計が6時を指しているのが目に入った。
「シャワー浴びてくるか?それとも一度家に帰るか?」
「一度帰るわ。着替えと、化粧もし直さなくちゃいけないし」
化粧をしたまま寝てしまうなんて、不覚だ。
既にボロボロになってしまっているだろうし、一度落として化粧をし直さなければ。
そう思い私もベッドを降りようとした。
「じゃあ送る。今支度するから待ってろ」
すると大倉さんはそう言って、私の額にそっとキスをすると、パソコンを置いたままのテーブルのほうへ戻って行った。
そんな彼の後ろ姿を見ながら、私はトイレへと入る。
そしてバタン、とドアを閉じたと同時に、足からは力が抜けてへなへなとその場に座り込んでしまった。