クールな社長の溺甘プロポーズ
ふ、普通に会話できてよかった……!
精一杯平静を装っていたけれど、正直限界だった。
大倉さんの顔を見ると、昨日のキスを思い出してしまって、恥ずかしさでいっぱいになる。
昨日のキス、夢じゃないよね?
本当に、私、大倉さんとキスしちゃったんだ……。
けど、そこから記憶が一切ないあたり、きっと寝てしまったのだろう。
そして大倉さんはそんな私をベッドにきちんと寝かしつけてくれたのだと思う。
酔っていたとはいえ、キスを受け入れてしまうなんて。
だけど、それでようやく自分の気持ちがはっきりした。
私は、大倉さんと一緒にいたいと思った。
……大倉さんのことが、好きなんだ。
気づいたら、こんなにも惹かれていた。
だけど問題は、この気持ちをどう伝えればいいのか。
素直に言うなんて私の性格上無理な気がする。
でも、大倉さんもキスをしたってことは……少しは心を寄せてくれているということかな。
お父さんへの恩、会社のため。それ以上の気持ちを私自身に抱いてくれているのかも、なんて。
こうやってまた、自惚れてしまう。
「はぁ……」
深く息を吐きその場にうずくまる。
手で触れた頬は熱く、きっと真っ赤になっているのだろうことが想像ついた。
それから私は、自宅へ一度帰り、支度を終えてから会社へ送ってもらった。
大倉さんの支度は大丈夫なのかと聞いたら、彼は朝方にシャワーを終え、着替えも終えたとのこと。
さすがというかなんというか、仕事が早い。
「じゃあ、また明日。迎えにくる」
「……うん。ありがと」
そう言って手を振り、会社前で別れる。
去って行くその車を、どこか寂しく思いながら見送る自分に、なによりの変化を感じた。