クールな社長の溺甘プロポーズ
「お父さん……もう、さっそく飲んで!お酒はほどほどにってお母さんから言われてるでしょ!」
「はは、その言い方母さんそっくりだなぁ。まぁ、とにかく座れ。お前たちも注文するといい」
笑って流すように言いながら、お父さんはメニュー表を差し出す。
それを見て、私は梅酒を、大倉さんはウーロン茶をと注文すると、それらはすぐ運ばれてきた。
「それでは、星乃と佑とお父さんに!かんぱーい!」
早くも酔っているのか、上機嫌にグラスを掲げるお父さんに、私はため息をつきながらグラスを合わせた。
そのタイミングを見計らったように、女将さんはテーブルの上にお造りや天ぷら、茶碗蒸しなど豪華な食事を並べていく。
そんな中、お父さんは大倉さんのグラスに目を留めた。
「なんだ、佑は相変わらずお茶か!つまらん男だな!」
「……そもそも飲めなくなったのも、澤口さんのせいですけど」
「えっ、そうなの?」
飲めない、と言う話はこの前聞いたけれど、原因がお父さんとは聞いていない。
首をかしげた私に、お父さんは「そうだったな!」と大きく口を開けて笑う。
「いやぁ、佑が20になった時ジュースだといってカクテル飲ませたら酔っ払って大変でなぁ。以来トラウマで飲めなくなったんだ」
「大変って、どうなったの?」
「それがまさかのキス魔……むがっ」
大倉さんは慌てて伸ばした手で、テーブルを挟んだ向かいに座るお父さんの口を塞ぐ。
い、今『キス魔』って聞こえた気がするけど……。
恥ずかしそうに頬を赤らめる大倉さんは、それ以上私には聞いてほしくなさそうだ。そう察して、それ以上問うことをやめた。