クールな社長の溺甘プロポーズ
驚いている?
それとも、安心してる?
彼の反応を知ることが怖くて、じゃあ、とパーキングとは反対にある駅の方向へ歩き出そうとした、その時。
大倉さんは私の右腕をグイッと引っ張り、そのまま強引にキスをした。
「んっ……」
なんで、いきなり。
先日のキスとは違う衝動的なキスが、逃げ出そうとするこの心を引き留める。
愛しい、唇。
このまま、彼のキスに溺れていたい。
身を委ねて、甘えたい。
だけど、ダメ。
そんなの、自分にとっても、なにより彼にとってもよくない。
先ほどの大倉さんの言葉が脳裏にチラつき、私はその唇を噛む。
痛みに顔を歪め、唇がほんの少し離れた瞬間、私は彼から距離をとり思いきりその体を突き飛ばした。
「やめてよ!気持ちなんてないくせに!!」
やめて、ほしい。
この心を、これ以上揺らさないで。
勘違いをさせないで。
怒鳴った瞬間、目からはポロッと涙がこぼれた。
「星乃……?」
唇に血がにじむことも構わず、私の涙に驚く彼は、一瞬悲しげな目をして見せてこの胸をぎゅっと締め付けた。
そんな苦しさから逃げ出すように、私はその場を駆けだした。