クールな社長の溺甘プロポーズ



米田さんの言葉の通り、気合いを入れ直し仕事に取り掛かった。

そして仕事を終え、迎えた夜。米田さんとふたりでやってきた六本木にあるスペインバルで、私はチキンをひと口食べる。



「おいし〜!元気でる!」



スパイシーな味付けのジューシーなチキンに、それに合うお酒という組み合わせに、つい顔はほころぶ。

頬を膨らませて笑う私と向かい合う形で座る米田さんは、同じくチキンをひと口食べた。



「だろ?この店俺も好きでよく来てるんだよ」

「あぁ、女の子とですか?」

「男同士で。悪かったな、寂しい独身で」



がやがやとにぎわう店内でそう話しながら、グラスに注がれたビールを飲む。炭酸が喉を刺激して、「ふう」と気の抜けた声が出た。

そんな私を見て、米田さんは小さく笑う。



「少しは元気出たみたいだな」

「はい。ありがとうございます」

「じゃ、ついでになにがあってあそこまで落ち込んでたのか、吐き出してみれば」



え……?



「仕事をなによりも大切にするお前が仕事どころじゃないくらい動揺することがあるなんて、よっぽどだろ」



そう言って、米田さんは私の頭をぽんぽんと撫でた。



やっぱり、気付かれていた。

元気付けるだけじゃなくて、私の沈む心にも耳を傾けようとしてくれている。その気遣いはやっぱり嬉しくて、私は口をひらいた。



「……彼と、終わりにしたんです」



大倉さんの言葉を聞いてしまったこと。

それ故に終わりにしたこと。

これからは前向きに結婚相手を探そうとも思っている、強がる気持ち。



それらのことを米田さんへひと通り話した。


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