クールな社長の溺甘プロポーズ
「米田さんも言ってたじゃないですか。彼はきっと私を好きなわけじゃない、って。それを思い知っちゃって、つらくなって」
えへへ、と笑って誤魔化してみせるけれど、少しでも気を緩めたら泣きそうだ。
その話を聞きながら、米田さんは手にしていたフォークを置いた。
「へぇ、じゃあ今澤口はフリーになったわけだ。しかも前向きに恋愛のことも、結婚のことも考えてる」
「まぁ、そういうことですね」
「じゃあ、俺にしない?」
へ?
突然のその言葉の意味がわからず、きょとんとしてしまう。
俺にって……米田さんに?
なんで?どうしてそんな話になる?
「俺、今まで黙ってたけど、澤口のことが好きなんだよ」
「へ?へ??」
「そうでもなかったら、こうして飯誘ったりしないって」
わ、私を好き?
米田さんが?
だから、こうして話を?
「えっ……えええ!!?」
混乱しながらもようやく意味を理解して声をあげると、周囲の人の視線がこちらへ向けられた。
その視線を感じながら、米田さんは苦笑いをこぼす。
「うわ、その反応傷つくな」
「だ、だって米田さんが私のこと、なんて……考えたことなかったし」
「いつも仕事で頭いっぱいって感じだったから、言うに言えなかったんだよ」
そ、そうだったんだ……。
けど、確かに。こうして米田さんに恋愛の話をするのなんて大倉さんのことが初めてかもしれない。
すると、その手は不意にテーブルの上の私の手に重ねられる。
大きく骨っぽい手は、体温が高く熱い。大倉さんとは違う、肌。
その感触に少しの緊張を覚えるけれど、それは大倉さんに感じるときめきとは違う。