クールな社長の溺甘プロポーズ



「大倉さんは、無愛想で、ちょっと強引で、時々なに考えてるかわからなくて……」



彼といると、戸惑うことばかり。

無愛想な顔をして、ときどき笑って、なんだって、受け入れてしまうから。

その度に嬉しくて、困る。



「大倉さんが、会社とお父さんのためにって言ったとき、すごく悲しかった。苦しくて、つらくて、泣きそうで……」



もう、強がれない。嘘はつけない。

気持ちを、隠すことはできない。



「自惚れちゃいけないってわかってても、会いたい。私は、大倉さんといたい」



私は、大倉さんのことが好き。今この瞬間も、まだ。

言い切った私に、米田さんはそっと手を離すと、その指先で私にデコピンを一発食らわせた。



「いっ!」



思い切り食らった一撃に、私はひたいを押さえて耐える。



「な、なにするんですか……」

「ようやく自覚したか。それが、お前自身の正直な気持ちなんだろ。相手の気持ちも大事だけど、まずは自分の気持ちをまっすぐに伝えろよ」



私の、気持ちを……。

確かに、今まで私は『大倉さんは』『大倉さんが』とそればかり口にして、私自身の気持ちは伝えなかった。

米田さんはそれを教えるためにも、私に気持ちを伝えてくれたんだ。



緊張しただろう、切ないだろう。

その胸の内を思うと、こちらの胸が締め付けられて苦しくなる。



「ありがとう、ございます……」



絞り出した声とともに頭を下げた。

情けない、米田さんにこうして言われるまで、気づけないなんて。

だけど、ようやくわかった。

譲れない、自分の気持ち。


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