クールな社長の溺甘プロポーズ
「だからその澤口さんの願いとなれば、結婚くらいする」
「は?」
ところが。大倉さんのそのひと言によって感心の気持ちは一瞬で消え失せた。
澤口さんの願いなら、って……それってつまり。
「お、お父さんから私と結婚するように頼まれたってことですか!?」
わなわなと震えながら大きな声で問いただすと、彼は真顔で頷く。
ちょっと待って、意味がわからない。
なんで、なにをいきなり……。
「聞けば、澤口製作所は跡継ぎ問題に直面しようとしているらしいな。次女は早々に嫁にいき、残った長女は仕事ばかりで結婚の気配もない、と」
「うっ……耳が痛い」
「このままでは会社を継ぐ者がいなくなる。いっそ娘にお見合いでもさせようか。澤口さんからそう相談を受けたものでな。それなら、と提案をさせてもらった」
提案?
って、どんな?と首を傾げてその話の続きを待つ。けれど、胸の中は嫌な予感しかしない。
「『俺が娘と結婚する。その代わりに、澤口製作所をうちのグループ会社のひとつにする。もちろん今後の会社の経営は俺が責任もって見るから後継者のことも気にしなくていい』と」
「は……はぁ!?」
俺がって、なんでそうなる!?