クールな社長の溺甘プロポーズ
「澤口さんからの頼みで星乃に結婚を申し込んだって言ったが、本当は俺自身が星乃のことが好きだった。
どこの誰かも知らない男と見合いなんてさせたくなくて……それを知った澤口さんが、協力してくれたんだ」
「えっ……」
結婚話は、会社のためじゃなかった?
むしろ、お父さんは彼に協力した側で、大倉さんは元々私を好きでいてくれて……。
ダメだ、頭がついていかない。
「って、待って!いつから!?だって私たちが初めて会ったのってあの日のはずじゃないの!?」
「いや、子供の頃に一度会ってる。澤口さんから聞いてないのか?」
子供の頃に?……あ。そういえば、以前お父さんがそんなことを言っていた気がする。
ということは、その頃から……!?
ただただ驚くしかできない私に、大倉さんは話を続ける。
「10歳の頃、些細なことで喧嘩をした俺はそれまでの寂しさもあって気持ちが爆発して、夜に家を飛び出したことがあったんだ」
「それってつまり、家出?」
「あぁ。だが行くあてもない俺が向かったのは、結局澤口さんのところで。
けど澤口さんはそんな俺を受け入れて、一泊だけ家に泊めてくれたことがあった。そこで、初めて星乃と出会った」
大倉さんが、うちに……?
「ぜ、全然覚えてない……」
「だろうな。星乃もまだ小さかったしな」
それこそ22年は前のことだ。
大倉さんが10歳ということは、私は6歳……覚えていなくても無理はないかも。
「澤口さんや奥さんにどれだけ説得されても『帰りたくない』ばかりを口にしていた俺に、星乃は『どうしてずっと我慢してるの?』、って言った。純粋に、不思議そうに言ったんだ」