クールな社長の溺甘プロポーズ
「言っただろ。いとしさを感じたのは過去にひとりだけって。俺の心には、ずっと星乃がいたんだ」
大倉さんが以前言っていた、その胸に残る存在。それは、子供の頃の私だったんだ……。
幼い私の言葉を、今でも忘れず残してくれていた。
私のことを見ていないどころか、何年のも長い年月、その心には私がいた。
それらの真実と、彼が今こうして伝えてくれる『好き』の言葉が嬉しくて涙がこみ上げそうになった。
それを隠すように、私は大倉さんにぎゅっと抱きついた。
「けど、それならそうって最初から言ってよ」
「一度会ったきりなのに子供の頃から好き、なんて言って引かれたくなかったんだよ。……で、それを聞いた澤口さんが『協力しよう』って言ってくれたってわけだ」
お父さんはお父さんなりに私と大倉さんの仲を取り持とうとしていたんだ。
あれ、でも。
ふと先日の会話を思い出し、私は顔を上げて大倉さんを見る。
「でもこの前、『会社とお父さんのため』って言い方してた……」
「あれは、澤口さんが口を滑らせないように念押ししてただけで」
そう言って彼は、『聞いてたのか』とバツが悪そうに困った顔で視線を外す。
「それに、星乃の気持ちが俺に向かない以上、そういうていでいた方が、傷つかなくて済むとも思った」
……そっか。
大倉さんも、怖かったんだ。
長年の気持ちを伝えること。
本当のことを知られること。
拒まれたら、否定されたらどうしようと言う気持ち。
怖くて、嘘で繕っていた。
だけど、もう大丈夫だから。
怖いことなんてないから、聞かせてほしい。
「全部、隠さないで言って。大倉さんの気持ちを、正直に」
まっすぐに彼の目を見て言う私に、その顔はますます困る。
そして徐々に赤くなる頬。上がっていくその体温は、彼の想いの大きさの証だ。