クールな社長の溺甘プロポーズ
「やっぱりお酒だったよ。すごく美味しそうなやつ」
ふふ、と笑って言いながらリビングへ戻る私に、その顔は『お前も好きだな』と言いたげに苦笑する。
「大倉さんもたまには飲んでみたらいいのに」
「断る」
ばっさりと言ってソファに座ると、大倉さんは突然私を手招きする。
なに?と近づけば、彼は私を足と足の間に座らせ、包むように後ろから抱きしめた。
「わ、いきなりどうしたの」
「少しだけ」
まるで甘えるように私のうなじに顔をうずめる。そのくすぐったさにドキ、と胸が音を立てた。
こうしてふたりで部屋で過ごす時間、大倉さんはこうして私を抱きしめることが多い。
長い間の片想いの分、と本人は言っていたけれど。
こうして触れ合うだけで、普段言葉のあまり多くない彼から、なにも言わなくても愛情が伝わってくる。
その気持ちに応えるように、彼の手に手をそっと重ねた。
「ところで、星乃はいつまで俺を『大倉』と呼ぶ気だ?お前もそのうち大倉になるのに」
すると、大倉さんからの問いに心臓はギクリと嫌な音を立てる。
「え!いや、なんか大倉さんで慣れちゃったからつい……」
「そうか。それなら慣れるまで練習だ。呼んでみろ」
「えっ」