クールな社長の溺甘プロポーズ
「けど、彼氏と上手くいってるみたいで安心した」
ぼそ、とつぶやいて小さく笑う。
そういえば……あの日以来、仕事のこと以外でこうしてふたりで話すのは久しぶりだ。
私もなにかと慌ただしく、米田さんは新ブランドの立ち上げメンバーにも選ばれたことでそちらにかかりきりだったから。
……私、きちんとお礼すら言えてなかった。
このままじゃダメだよね。
そう決めて、私は小さく頭を下げる。
「……米田さんがあの時教えてくれたからです。ありがとう、ございました」
突然の私の言葉に、米田さんは少し黙ると、「ふっ」とおかしそうに笑った。
「なーに改まってるんだよ。照れるだろ」
そう言いながら私の頭をくしゃくしゃと撫でて顔を上げさせる。
目の前で見つめるその表情は、いつもと変わらぬ優しい笑顔だ。
「それに、俺は今でも好きだよ。澤口のこと。……すぐには簡単に諦めきれないけど、仲間として、人として好きなのはきっと一生変わらない」
彼の気持ちに応えられることはない。
だけど、それでもなお『人として好き』と言ってもらえることは、とても嬉しい。
その真っ直ぐな言葉に、こちらも笑みがこぼれた。