クールな社長の溺甘プロポーズ
「そういう気遣いいりませんから!大倉さんがそこにいるなら、私今日会社サボって家に引きこもります!」
『そうか。なら俺が部屋まで迎えに行くか?澤口さんから合鍵も預かっていることだしな』
「合鍵!?」
鼻で笑いながら彼がカメラ越しに見せるのは、もしもなにかがあったときのためにお父さんに預けていた私の部屋の合鍵。
お父さん!娘の家のセキュリティーをなんだと思ってるの!!
けれど、鍵を持たれているとなれば、もう逃げ場はない。
結婚するつもりのない相手から送迎されるなんてイヤ。
だけどこのままここにいれば、彼は本当に部屋まであがってくるだろう。
「……拒否権なんてないじゃない」
観念したように呟くと、私はがっくりとうなだれ身支度を始めた。
顔を洗い、メイクをして、袖を通すのはビジューがついた白い丸首ブラウス。
ボトムスはピンクベージュのスカンツで春らしさを出して、と全身をうちのブランドの新作で包む。
店舗巡回の時以外は基本的にオフィスでの勤務だし、そんなに全身バッチリ決める必要もないとも思う。
けれど、やっぱりせっかくなら自身のブランドの服を着てあげたいし、おしゃれもしたい。
社員価格で買えることもあって価格的にも嬉しいし。
部屋を出て、チャンキーヒールをコツコツと鳴らしながらマンションのロビーへとやってくると、そこにはグレーの細身のスーツに身を包んだ大倉さんがいた。