クールな社長の溺甘プロポーズ
「思ったより早かったな」
「あなたが待ってると思ったから急いだんです!忙しなくてしょうがなかったわよ」
不満そうに眉をあげる私に、彼は流すようにとくに反応もせず、マンションの外へ出る。
続くように私も出ると、眩しい朝陽の下、マンション前には一台の白い乗用車が停められていた。
車にはあまり詳しくないから車種とかはわからないけれど、ピカピカに磨かれた汚れひとつないボディと有名な円形のエンブレムから、ハイグレードな車なのだろうことはわかった。
「星乃」
彼は名前を呼んで、『どうぞ?』といわんばかりに助手席のドアをあけた。
普段高級車に乗ることも、こんな風にエスコートされることもない私は思わず気が引けてしまう。
けれど、ここで『乗らない』なんて言えば『乗りたい気分になるまでここで待つ』とか言い出しそうだし。
「お邪魔、します」
渋々乗り込むと、黒いシートに腰を下ろす。
芳香剤とはまた違う、清潔感のあるすっきりとした香りを感じながらシートベルトを締めると、ドアを閉めた彼も運転席に乗り込んだ。