クールな社長の溺甘プロポーズ
「あの、わざわざ朝から迎えとかしなくていいですから。こんなことされても結婚する気になんてならないですし」
「心配するな。俺は早起きは得意だ」
「別にあなたの心配をしてるわけじゃないんですけど!」
そういう意味じゃなくて!
強い口調で言う私に対しても彼はなんてことない顔のまま。慣れた手つきで車を走らせ始めた。
「朝食は?どこか寄って行くか?」
「結構です。時間ないですし」
「そうか。じゃあ次回からはもう一時間早く来る」
来なくていいってば!
つい言いそうになったけれど、言ったところで彼は聞かないだろうと察して飲み込んだ。
いきなり会社でプロポーズして、断られたにも関わらず、朝から家まで迎えにくるなんて。いくら会社のためだからって、普通ここまでする?
ていうか、そこまでお父さんとも親しいのかな。いや、彼の事情なんてどうでもいいか。
今はとりあえず、一刻も早くこの結婚話を終わらせたい。
少し車の多い、朝の街を行く車の中、私は自ら話題を切りだす。
「そもそも結婚って簡単に言いますけど、そんな簡単に決めていいんですか?結婚となれば自分だけじゃなくて家族も関わるんですよ?」
「大丈夫。うちの家族は問題ないし、澤口さんはもちろん、星乃のお母さんにも挨拶済みだ」
「いつの間に!?」
お母さんにまで会ってるの!?
自分が思っていた以上に話が進んでいることに思わず絶句した。
イケメン大好きなお母さんのことだから『こんなかっこいい彼が星乃の旦那さんだなんて嬉しいわ~』と受け入れてしまった図も想像がつく。
やっぱり、ここは私がしっかりと断らなければ。